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日本で行われているのはプライベート・バンキングサービス
日本でもプライベートバンクという言葉がよく聞かれるようになっています。ですが日本で一般的に言われているプライベートバンクは「プライベート・バンキング」のことで、海外で使われているプライベートバンク(以下PB)とは実際には意味が違います。今回は日本とのプライベート・バンキングと海外のPBについての違いを解説していきます。
日本でもよく聞かれるようになった、プライベートバンク。昔からあるプライベートバンクが行っていた資産家向けのサービスを、都市銀行のプライベートバンク部門や大手証券会社が模倣して行っているサービスを「プライベート・バンク」と呼んでいるようです。しかし、後述する世界のPBとは違い、こちらは総合銀行が主としてやっているプライベート・バンキングサービスです。
日本人にとっては安心が売り
日本人向けのサービスなので、日本の税制に通じていることや窓口が国内にあることで、比較的利用しやすいことがメリットでしょう。通常の株取引だけでなく、仕組債や仕組預金などを多用し顧客の財産を守ります。資産規模も海外のPBと同様、一億円程度は必要ですが銀行により必要な金額は異なります。資産家であれば都市銀行などの取引もあるでしょうから、その延長線上でプライベートバンクを紹介してもらえることも安心材料の一つかもしれません。
プライベート・バンキングに任せるデメリットも散在している
ただし、プライベート・バンキングに任せるべき資産運用に関していえば、本当に任せていいのか疑問が大きく残ります。ここではデメリットを3つあげます。
・ブローカーレッジモデルであるということ
・担当者が頻繁に変わる
・富裕層の要望に応えるスキルをもった担当者が少ない
ブローカーレッジモデルとは、取引の仲介手数料を得てビジネスを展開しているということです。つまり顧客のニーズに合っていない商品でも販売することがプライベートバンクの目的になってしまうことです。これでは富裕層は安心して任せることができません。
さらに不安な材料は、担当者の変更が多いことです。人事異動をすることで人材育成を図るのが目的ですが、顧客にとって担当者が変わること自体、メリットはほとんどありません。担当者が変わるたびに信頼関係を作っていかなくてはいけないので、顧客側にとってストレスを感じることもあるでしょう。
また2018年12月に野村総合研究所の発表した資料によると、2017年には超富裕層と呼ばれる5億円以上の純金融資産を保有している世帯は8.4万世帯、富裕層と呼ばれる1億円以上5億円未満は118.3万世帯ありました。
プライベート・バンカーは、顧客のニーズを聴くことや、商品の特性を分かりやすく説明を行うなど、高度なテクニックが必要です。富裕層の世帯数が多い日本では、プライベート・バンカーの数が少なすぎます。日本証券アナリスト協会のPB資格保有者数は2020年3月で約2200人。人事異動などで、直接顧客と接点を持たない資格保有者もいるはずなので、実際に顧客と関わっている人はもっと少なくなるでしょう。
PBはスイスが発祥、300年以上の歴史の意味とは
永世中立国として有名なスイス。300年以上前は傭兵業が盛んな国でした。それとPBがどのようなつながりがあるかというと、傭兵として出ていった家長などに変わり、資産を保全する役割を担ったのがPBでした。前述した日本と違うのは、PBはプライベートバンク専業であり、すべて責任を取りますという無限責任をもったパートナーと関わることになります。すべての責任を追うわけですから、無茶なことは当然しませんし、クライアントにとって最適な施策を提案します。
顧客の利益を守るためにPBはある
そのため、海外のPBの収益モデルは管理手数料型で、預かり資産に対して一定の割合で徴収していきます。これをフィーモデルと呼びますが、ブローカーレッジモデルよりもより中立的な取引が期待できます。理由は顧客との利益相反になりにくいからです。このような資産管理はもちろんのこと、ご子息の留学先、就職の斡旋、家や車の手配まで行います。
最近は情報開示の流れに押され気味
かつては守秘性が高いと言われていたスイスのプライベートバンクでしたが、2008年にスイス金融大手UBSに関連した数億ドル規模の脱税事件が発覚します。被告で元UBS従業員であるBradley Birkenfeld被告が富裕層の米国人顧客の数百万ドルの脱税をほう助していたのでした。この事件をきっかけに国際的な脱税および租税回避に対処するため、共通報告基準(CRS)が公表されOECD内での各国が実施を約束することとなります。CRSにより非居住者の口座情報を居住者の税務者に報告することとなり、現在はスイスの銀行であろうとも情報を開示するようになっています。
ビリオネアはプライベートバンクを利用している
このプライベートバンクを派生したものにファミリーオフィスがあります。ファミリーオフィスは富裕層自らが会計士や弁護士、子供の先生などさまざまな専門家のチームを組んで、一族のサポートをします。ロスチャイルド家やロックフェラー家等は、自分の家で創設したファミリーオフィスを、他の富裕層のサービスに対応させるということもしているようです。ファミリーオフィスを使う層はビリオネアである1000億円以上の資産を持っている富裕層が主に利用しています。
以前ほど強固ではないにしろ、海外では富裕層を守るための組織が依然として多数存在しています。
プライベートバンクを謳う業者には注意を
プライベートバンクと聞くと、つい「凄そう」と感じてしまいます。しかし、よくよく聞いてみると、日本のプライベートバンキングサービスとプライベートバンクを混同していることが多いものです。
また、プライベートバンクが数百万でできるという嘘をいう人もいるようです。本来のプライベートバンクはそのような金額で参加できるものではありません。たまに金融業界でも分からない人がいるのも事実ですが、あとあとトラブルにならないようにするためにも、よく知らない金融関係者の話を聞きに行くのは控えたほうが良さそうです。
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