日本はGDP(国内総生産)で世界第3位の経済大国です。しかし日本の労働生産性は40年以上も前から先進国の中でも低いという一面もあります。働き方改革でも状況が変わらない、全体の賃金は上がっているはずなのに実感がわかない、こういった出来事は日本の労働生産性が低いことに問題があります。
今回は働き方改革がなぜ機能していないのかという原因について、日本の労働生産性の低下という観点から解説をしていきます。
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なぜ先進国と比べると日本の労働生産性は低いのか?
一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、欧米諸国ではサマーバケーションが数週間と長く、仕事は定時に終わらせて家族と過ごす時間を大切にしています。対して日本はお盆あたりの連休と別途夏休みがついても一週間ほどです。これだけでもおよそ100時間は労働時間の差がついているにも関わらず労働生産性では負けています。なぜ差がついてしまうのでしょうか?
そもそも労働生産性とは
労働生産性とは、「就業者1人当りの国内総生産」と「就業1時間当たりの国内総生産」のことです。つまり日本人1人が働いて得る収入と時給でいくら得ているのかを金額で表したものになります。
先進国と比べると日本の労働生産性は低い
日本生産性本部が行った「労働生産性の国際比較 2018」の調査によると、OECD(経済協力開発機構)加盟国における日本の時間当たりの労働生産性は47.5ドル。OECD加盟国中20位という結果です(36ヶ国中)。一方アメリカは72.0ドルとなっており、アメリカの3分の2に届く程度となっています。主要な7ヶ国(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・イタリア・カナダ・日本)の中ではなんと40年以上も最下位を更新し続けています。
また日本人1人あたりの労働生産性は84,027ドルでOECD加盟国中21位となっており、この金額はイギリス((89,674ドル)やカナダ(93,093ドル)を下回るという状況です。世界第3位の経済大国とはなんなのか!と思わず問いたくなってしまいます。
生産性の低さは日本企業の失敗
では労働生産性を上げるにはどうすればいいのかというと、簡単に説明すると3つの要素があります。
1:労働の時間を減らす
2:働いている社員の数を減らす
3:稼ぐ金額を増やす
これらの要素を増やせば生産性は上がっていきます。
しかし、現状はその流れがなかなか本流となっておりません。諸外国と比較して稼ぎが少ないため、労働時間をたくさん増えます。抜きん出た人ではなく会社の方針に従う社員を優遇して雇う労働集約型のビジネス、これが日本企業の現状です。例えば前述した時間あたりの労働生産性でアメリカと比較した場合、1万ドルを稼ぐのにアメリカ人なら約139時間で済むところ、日本人なら約210.5時間もかかります。
グローバル社会や国際競争力などと言われ続けていますが、マンパワーで乗り切る労働集約型の体質は変わる気配がありません。そこで登場するのが「働き方改革」です。
働き方改革は上手くいくわけがない
働き方改革とは厚生労働省の定義によると以下のようになっています。
「育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化」「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」といった問題を解決するため、個人の事情に応じた働き方を選択できる社会を目指し、就業する一人ひとりが明るい将来の展望を持てるようにする。
では具体的に企業はどのような取り組みをしていくのでしょうか。
高齢者に働く機会を与える
国立社会保障・人口問題研究所によると65歳以上の割合が2020年には3,600万人に達するとされています。少子高齢化により労働者が現在進行系で減っている状態です。
そこで65歳以上で働く意欲のある人に就労機会を与えていきましょう、継続雇用や定年延長を実施した企業には国から支援があります。ということなのですが、中小はともかく社員数の多い大企業ほどやりたがらないでしょう。ロクに仕事をせず高給を受け取り定年まで居座る社員を延命させるくらいなら、低賃金で働かせられる若年層やスキルのある人を中途で雇った方がいいです。
長時間労働を改善する
三六協定を見直すことで残業時間に制限が入るようになりました。しかしブラック企業や零細企業などでは雇用を盾にサービス残業はまだまだ行われており、労働基準監督署に告発でもしない限り発覚はしにくいという問題があります。では大手企業なら監査も入るし安心かというとそんなことはなく、2015年に起こった電通社員の自殺は長時間労働が原因でした。
日本の企業では会社独自のルールに従うという暗黙の了解が根強く残っており、逆らうと居場所がなくなるかもしれません。企業任せで改善をしようとしても遅々として進まないのは誰の目にもあきらかです。
正社員と非正規社員の格差を減らす
2020年4月から「同一労働同一賃金」という制度が実施されるようになります。これは派遣社員やパートタイムの労働者、有期の契約社員などとの格差を無くすため、同一の仕事内容やスキルがあるなら給料に差をつけませんという制度です。
これだけ聞くと素晴らしいと思いますが、もちろんデメリットもあります。企業は今まで安い賃金で非正規社員を雇っていたため、格差を無くすということは支払う給料が上がります。そうなると企業側は苦しくなり、今後は非正規の求人を減らす方向に舵を取るか、正社員全体の給料を下げる可能性は十分にあります。結果正社員の負担が増え、稼働時間が長くなり、労働生産性は落ちるばかり…といった負のスパイラルに陥るかもしれません。
現状のままでは日本はジリ貧!
まだ始まったばかりとはいえ政府がプッシュしている働き方改革では、日本の企業はおそらく変わらないでしょう。諸外国と比べた労働生産性の低さは40年以上も継続しています。脈々と受け継がれた労働集約型の企業体質は早々に変わるものではありません。
経営者であれば働き方改革に沿った施策を打ち出していくこともできます。しかし雇われの労働者ならできることはほとんど無いため、会社に頼らない投資や金融知識を高めて自分の身を守ったほうがよほど建設的です。労働可能な人口が減り、社会保障の負担がますます増える高齢化社会へ向けて、自身の備えについてはしっかり考えておきましょう。
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